家電も量販系店系PBが拡大

 大手量販店の「PB家電」の売上が拡大している。日本の家電メーカーは、一時期、抜きんでた商品力で世界市場を席巻したが、その後の家電のコモディティ化、低価格化、そして中韓メーカーの台頭などの市場変化を読み切れず退場していった。
 一方、市場ニーズの変化に対応してきたイオンなどの大手量販店は、顧客満足度向上のため品質向上と低価格化、そしてNBに頼らないPBの商品開発を強力に推し進めてきた。当初は、食品や日用品だったが、その後コモディティ化した小型家電を、さらに最近では白物大型家電までをもPB化している。このPB家電化の動きは他業態の量販店にも広がり、価格の安さだけでなく、その「店らしさ」のオリジナル性の高いPB家電とし人気商品になっている。

安さと機能性の量販店系PB家電 
 「お、ねだん以上!」のニトリは、家具販売からスタートし、生活雑貨やインテリア商品などの製造小売業として成長してきた。そして「住まいの豊かさを世界の人々に提供する。」という理念のもと、新たに家電を成長事業として位置付ける。そして同社は、一人暮らしを始めた人を対象として部屋のコーディネートに合わせて家具やインテリア、そして小型家電、さらに大型家電までをワンストップで購入できる品揃えを行う。二トリ家電の特徴は、安さとデザイン性を重視し、商品ラインを少なくして選びやすさを重視している。
 白物大型家電の市場投入に当たっては、事前にエディオンとECや顧客対応などで協業して家電事業ノウハウを蓄積。そして機能を絞り込んだシンプル設計で低価格普及タイプのPB家電を店舗とECで販売し顧客の利便性に応える。例えば、通常は、20万円を超えるドラム式洗濯機(’24年11月発売)は、アクア(旧サンヨー、ハイアール傘下)に製造委託し99,900円(税込み、配送料別途)と破格な価格設定をする。また冷蔵庫はハイアール、エアコンやTVはハイセンスなど商品に応じて最適なOEMメーカーに製造委託して売上げは堅調に推移している。
 国内外の顧客に人気の「驚安の伝道」ドン・キホーテ(PPIH)は、「ありえ値え!」低価格を実現するPB(ピープルブランド、顧客との共創)に力を入れ、食品や日用雑貨、そして家電なども含めて約200カテゴリーと幅広い商品展開を行っている。
 ドン・キホーテのPB家電は、低価格はもちろんだが「ドンキらしさ」を前面に押し出している。例えば、動画専用TVに対するニーズが大きいことを掴み、NHKや民放ではなくNetflixなどの動画視聴(VOD)やゲーム専用のAndroid機能搭載50型4KチューナーレススマートTVを外部企業と共同開発。スマホでいつも見ている小さな画面を大画面で、また臨場感あふれるサウンドで楽しめるのが特徴。しかも税込54,780円と「情熱価格」だ。そしてプロモーションは、ファン顧客の口コミやSNSアカウント、インフルエンサーの協力を得て商品情報を拡散する。さらに同社の強みのインパクトのある店頭陳列やDSで来店客にアピールし購買を促進している。
 家電量販大手のヤマダHDは、「くらしまるごと」を戦略方針にして、家電、家具・インテリア、住宅・リフォーム、金融、環境などの事業のシナジー効果を狙い、また顧客にはワンストップで商品を提供することで売上拡大を狙う。
 売上の8割を占める家電セグメントでは、多様化する顧客ニーズや節約志向にNB家電だけでは応えきれなくなっているので、お手頃価格ゾーンの品揃えを強化するためPB家電に力を入れている。
 例えば、ヤマダデンキPB「RORO(ロロ)」からの斜めドラム式洗濯乾燥機(’25年4月発売)は、タイパを重視する顧客にコンパクトで使いやすい設計、そして低騒音で価格は109,780円(税込み、配送料込み)だ。ニトリに対抗できる価格設定であり、家電量販店としての長期保証などのサポート体制も充実している。
 通常、NB家電の場合、大量仕入れで粗利は20~30%程度だが、PB家電の場合は40~50%が期待できる。そこで利益率の低下に苦しんでいる同社は、PB家電を充実させることで’30年には家電売上高3000億円、全体の売上構成比15%、そして利益率の向上を目指している。

必要なのは商品開発力と販売力
 量販店系PB家電の強みは、商品開発力と売り切る力があることだ。商品開発は、日々の購買解析データが活用でき、また時短やコスパなどの顧客ニーズ把握力もありアイディアの発想基盤は強い。そして外部の企画会社やメーカーとのネットワークも構築しており臨機応変に共同開発を行うことができる。さらに新規性の高いPB家電は、マクアケなどのクラウドファンディングの仕組みを活用し顧客の受容性を検証したり、プロットタイプをD2Cで販売するなどして市場性を探索することもできる。そして品揃えはフルラインの必要はなく、ストアブランドとの整合性を持たせメリハリをつけた商品展開で利益率重視のPB化が狙える。
 製造は商品によって最適なOEMメーカーとの協業体制の中で、量販店主導で低コスト化と品質向上の両立を狙い、また販売動向を見ながら多品種・小ロット・迅速生産体制の中で在庫リスクの最小化を図ることができる。
 販売は、会員顧客を中心にWebサイトやアプリで効率的に情報提供し、また「個客」に応じたインセンティブ付けもタイムリーに行える。そして顧客データを活用しながら店舗とECのマルチチャネルで販売できるのが大きな強みだ。

顧客ソリューションに応える
 現在、家電はコモディティ化が進み、また国内外の製造メーカーによる低コストのOEM体制も整備され、家電市場への参入障壁は低くなり競争はますます激しくなっている。
 しかし大手量販店は、多くの顧客基盤を持ち日常的な購買を通じてストアブランドを確立しているので家電メーカーと比べて優位性が高い。またモノからコトの時代は、顧客は家電単品ではなく家電に関わる様々な課題のソリューション提案を求めている。例えば、新築やリフォームで考えると、顧客は家具、インテリア、生活雑貨、そして家電、さらに家電ネットワーク(IoT)の最適化などトータルで「その店らしいアドバイス」を期待しているのだ。
量販店系PB家電は、「個客」に寄り添う快適なライフスタイル提案の中で進化し続けているので今後も有力な選択肢になることは間違いがない。

2025/09/25
縄文コミュニケーション株式会社
モモズプラネット顧問 福田博

2026年07月09日